前立腺癌腫瘍マーカー PSA F/T比について
① PSA F/T比の異常、PSA検査で異常があった場合はどうすればいいのでしょうか?
② そもそもPSA F/T比とは?
③ PSA F/T比の解釈について
④ PSA F/T比の検査・診断方法
⑤ PSA F/T比でお悩みの方は当院へご来院ください
【① PSA F/T比の異常、PSA検査で異常があった場合はどうすればいいのでしょうか?】
総PSA(t-PSA)が4~20 ng/mLの範囲で、F/T比(f-PSA÷t-PSA)が12%以下(cut-off 0.12)の場合、前立腺がんのリスクが高まります。この基準では感度90.4%、特異度51.8%と報告されており、F/T比が低い場合は前立腺MRIや経直腸超音波ガイド下生検を検討すべきです。PSA F/T比(PSA Free to Total Ratio)は、前立腺から分泌されるタンパク質であるPSA(Prostate-Specific Antigen)の2つの異なる形態であるFree-PSA(フリーPSA)とTotal PSA(総PSA)の割合を示す指標です。これは前立腺がんと前立腺肥大症などの状態を区別するために用いられる重要な情報です。
【② そもそもPSA F/T比とは?】
具体的には、PSA F/T比は以下のように説明できます:
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Free-PSA(フリーPSA):前立腺から分泌されたPSAの一部で、血液中に存在するPSAの中でフリー(結合していない)な形態のPSAを指します。通常、前立腺がん細胞から分泌されるPSAはFree-PSAが少なく、前立腺がんの特徴と言えます。
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Total PSA(総PSA):前立腺から分泌されたPSA全体の量を指します。これにはFree-PSAだけでなく、他の形態のPSAも含まれます。
PSA F/T比は、これら2つのPSA形態の割合を計算しています。計算式は以下の通りです:
PSA F/T比 = (Free-PSAの数値 / Total PSAの数値) × 100
この計算により、PSA F/T比は百分率で示され、前立腺がんと前立腺肥大症などの鑑別に役立ちます。
【③ PSA F/T比の解釈について】
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PSA F/T比が低い(通常12%未満)場合:前立腺がんの可能性が高い。Free-PSAが少なく、Total PSAに占める比率が低いため。
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PSA F/T比が高い(通常25%以上)場合:前立腺肥大症や炎症など、前立腺がん以外の原因によるPSA上昇の可能性が高い。Free-PSAが比較的多く、Total PSAに占める比率が高いため。
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PSA F/T比が12%~25%の間:グレーゾーンであり、前立腺癌か他の原因があるのかを判断するのには不十分。追加の検査(例:前立腺MRI、前立腺生検)が必要とされることがあります。
【④ PSA F/T比の検査・診断方法】
- 採血でf-PSA・t-PSAを同時測定
- F/T比を算出
- cut-off 0.12(12%)以下:前立腺がんを強く疑い、精密検査へ
- 年齢70歳以上ではcut-offを0.10(10%)に下げると、感度83.3%・特異度65.5%で精度向上
【⑤ PSA F/T比でお悩みの方は当院へご来院ください】
東青梅診療所では、近隣の基幹病院である市立青梅総合医療センタ-等と協力し、超音波検査、前立腺MRI、生検までをスムーズに対応できます(当院では、前立腺生検は施行しておりません)。また、前立腺生検等施行後、PSA 高値が持続している方のフォローも当方で行っております。ご説明から治療方針まで、泌尿器科専門医がサポートいたします。
References
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Catalona WJ, Smith DS, Wolfert RT, et al. Use of the percentage of free prostate-specific antigen to enhance differentiation of prostate cancer from benign prostatic disease. JAMA. 1998;279(19):1542–1547.
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American Cancer Society. Prostate Cancer Screening Tests. Cancer.org. Accessed May 2025.