夜間頻尿〜夜間に何度も排尿で起きる〜
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高齢の方で日常生活で筋力低下が著明な患者さん
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年をとると、夜間に尿を出すホルモン(バソプレシン)の量が減り、膀胱に溜められる尿の量も少なくなるため、夜トイレが近くなりやすい。
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むくみや心臓の調子が悪い方
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足や手にたまった水分が寝ている間に血液に戻り、たくさんの尿が作られて夜中に何度もトイレに起きることがある。→夜間頻尿の治療の前に、心不全などの治療が優先されます
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糖尿病や腎臓の病気がある方
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血糖値が高いと余分な糖分を尿と一緒に出す「浸透圧利尿」が起こったり、腎臓の働きが低下して水分の調整がうまくいかなくなるため、夜間頻尿が強くなる。糖尿病の治療が優先されます
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睡眠時無呼吸症候群(いびきや無呼吸がある方)
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睡眠中に何度も呼吸が止まると、体内で尿を多く作る物質(ANP)が増え、夜中の尿量が増える。睡眠時無呼吸症候群の治療が優先されます。
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肥満やメタボリック症候群のある方
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体重が重いと睡眠時無呼吸のリスクが高まり、また夕食後の水分・塩分の取りすぎが夜間の尿量を増やす。ダイエットが必要です。
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前立腺が大きい男性
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前立腺肥大症の治療をしても、外科的治療を考慮しければならない状況(前立腺重量50グラム以上)では夜間頻尿が改善しにくい場合があります
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上記に該当する患者さんについては、夜間頻尿の改善が難しいことが多いですが、その点もご理解いただいたうえで受診してください
① 夜間、何度もトイレに起きてしまう。夜間頻尿かもしれません ― どうすればいいのでしょうか?
② そもそも夜間頻尿とは?
③ 夜間頻尿で考えられる原因や病気とは?
④ 夜間頻尿の検査・診断方法・治療方法は?
⑤ 夜間頻尿でお悩みの方は当院へご来院ください
① 夜間、何度もトイレに起きてしまう。夜間頻尿かもしれません ― どうすればいいのでしょうか?
「夜中に何度も目が覚めてトイレに行く…」「ぐっすり眠れず、朝の目覚めもつらい…」
このような悩みを感じたら、それは夜間頻尿かもしれません。
夜間頻尿とは、就寝後に排尿のために1回以上起きる状態を指します。中でも「2回以上」トイレに起きる場合は、睡眠への影響が大きく、治療の対象となります(EAU 2024年版ガイドラインより)。
睡眠の質の低下は、身体の回復やホルモンバランスにも悪影響を与えるため、単なる「排尿の悩み」ではなく、全身の健康問題の一部として捉える必要があります。
② そもそも夜間頻尿とは?
健康な人は、夜間に6~8時間ほど連続して眠ることができますが、夜間頻尿があると睡眠の途中で何度も目覚めてしまい、深い眠りが妨げられます。
この症状は、以下のような影響を及ぼします:
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睡眠不足による日中の集中力・記憶力の低下
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だるさ、疲れやすさ、うつ気分
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夜間の転倒・骨折リスク(特に高齢者)
夜間に繰り返しトイレに起きるというのは、体の不調のサインかもしれません。早めの相談が大切です。
③ 夜間頻尿で考えられる原因や病気とは?
夜間頻尿は、次のような原因に分類されます:
夜間頻尿は、原因によって大きく3つのタイプに分類されます(AUA “Nocturia Clinical Guidelines” 2023):
1. 夜間多尿(Nocturnal Polyuria)
→ 夜間に尿が多く作られる状態
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高血圧、糖尿病、心不全、腎機能低下など
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睡眠時無呼吸症候群
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夕方以降の水分・塩分の過剰摂取
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利尿薬の影響
2. 蓄尿障害(Reduced Bladder Capacity)
→ 膀胱が少ししか尿をためられない状態
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過活動膀胱(OAB)
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前立腺肥大症(BPH)
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間質性膀胱炎
3. 睡眠障害による機能性夜間頻尿
→ 尿意ではなく、睡眠の浅さ・中途覚醒が主因
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不眠症、うつ、不安
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睡眠時無呼吸症候群
※女性では骨盤底筋のゆるみ、閉経後のホルモン変化、過活動膀胱などが複雑に関与し、男性よりも原因が多因性で改善が難しい場合もあります(JUA女性下部尿路症ガイドライン2023)。
④ 夜間頻尿の検査・診断方法・治療方法は?
【診断で大事なこと】
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排尿日誌(24時間記録)
→ 尿量・回数・時間・飲水量を記録して原因分析に使用。
→ 夜間尿が総尿量の33%以上:夜間多尿と診断(JUAガイドライン2023)。 -
問診
→ 水分摂取、飲酒・薬、睡眠状態、既往歴の確認。 -
検査
・尿検査(糖・蛋白・感染など)
・血液検査(腎機能・血糖・電解質・PSAなど)
・膀胱・前立腺の超音波検査(残尿も確認)
・必要に応じて睡眠検査(睡眠時無呼吸の評価)
【治療方法:原因別に対応】
● 夜間多尿タイプ
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夕方以降の飲水・塩分制限
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利尿剤の服用時間調整
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抗利尿ホルモン薬(デスモプレシン)※高齢者では低Naに注意(厚労省添付文書指針)
● 蓄尿障害タイプ
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抗コリン薬・β3作動薬(過活動膀胱)
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α1遮断薬・5α還元酵素阻害薬(前立腺肥大症)
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必要に応じて前立腺手術
● 睡眠障害タイプ
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睡眠環境の整備(音・光・温度)
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睡眠薬の調整
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睡眠時無呼吸の治療(CPAP等)
⑤ 夜間頻尿でお悩みの方は当院へご来院ください
夜間頻尿は、「加齢だから」とあきらめず、原因を見つけて治療すれば改善することが多い症状です。
当院では、泌尿器科専門医が、排尿日誌の評価、超音波検査、生活指導、薬物療法まで一貫して対応します。
特に高齢の方では、転倒・骨折予防、日中の活力回復、睡眠の質の向上につながります。
ご予約は、24時間対応のWeb予約が便利です。
▶ http://ome-clinic.mdja.jp/
出典
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日本泌尿器科学会(JUA)『夜間頻尿診療ガイドライン 2023』
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European Association of Urology (EAU) Guidelines on Non-Neurogenic LUTS 2024
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American Urological Association (AUA) “Clinical Guideline on Nocturia” 2023
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厚生労働省 e-ヘルスネット『夜間頻尿』
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国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター『夜間頻尿と転倒』
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医薬品医療機器総合機構(PMDA)『デスモプレシン製剤の適正使用に関する注意喚起』
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日本泌尿器科学会. 夜間頻尿診療ガイドライン. 2018.
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Abrams P, et al. EAU Guidelines on the Management of Nocturia. European Urology. 2023;85(6):939–957.
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Tikkinen KA, et al. Systematic review and meta‐analysis of the association between possible risk factors and nocturia. BJU International. 2014;113(5):731–741.
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Weiss JP, et al. Nocturia: Pathophysiology and management. Journal of Urology. 2018;199(6 Suppl):S20–S28.
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Miller JM, et al. AUA Guideline: Nocturia. The Journal of Urology. 2019;202(4):878–886.