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青梅・東京の状況について 8月3日 午前3時

[2021.08.03]
正直、メディアの報道をみると、なんで飲食店だけこんな風にやりだまにあがるのかわかりません。自分が行きつけの焼き鳥屋さんとか、料理屋さんが苦しい思いをしていると何とかしてあげたいと思っています。
ただ、コロナの流行がすさまじいのは事実。インフルエンザと、コロナを比較する方がいらっしゃいますが、皆がマスクつけるだけでインフルエンザはゼロになるが、コロナはそれでも増加する。この時点で、コロナとインフルエンザを同じ土俵で比べるのは違うと思います。
 
インフルエンザでこんな劇的な肺炎像(僕らは、急性呼吸窮迫症候群ARDSって言ってる病態)を呈する事なんて、ほとんどありません。最近は、子供でも発熱を主訴に来院する中に、コロナウイルス陽性患者さんがいるのもつらい事実です。特に、現在、重症化している年代は、僕と同じ年代40歳代〜50-60歳代。この年代については、今までの高齢者と違い、重症化した場合は、徹底的に治療する対象になります。これは、高齢者は治療しないと言っているわけではなく、高齢者の場合は、ある意味短期決戦で終わってしまう事例も多い(つまり亡くなってしまう)のです。また、高齢者の場合は、ご家族が、人工呼吸器などの高度治療を希望しない場合は、正直、医療の逼迫につながらない事もこれまではありました。
 でも、中高年が重症化した場合、人工呼吸器は必須、さらに必要であればECMOをふくめた集中治療となり、長期戦にもつれこみます。手数は増えたが現状では根治的な治療薬もない。管理も非常に大変です。人工呼吸器の台数や集中治療病床数ばかりが、メディアではとりだたされていますが、一番大事なのは人的ソースです。
 一般の方や、場合によっては一部の医療者(特にテレビ出演の多いなんちゃって感染症・救急医やお偉いさんの重鎮先生)もわかっていないが、人工呼吸器を扱いながら、重症感染症の治療を進めていくというのは、病院でも一部の医師(救急医、集中治療医、呼吸器内科医師、さらに感染症医など)しかできなくて、さらに重要なのは多職種の連携が(臨床工学技士、看護師、栄養管理、リハビリその他含め)絶対に不可欠だということです。
 どっかのお偉い外科医やノーベル賞とった有名な医師が、俺たちは”人工呼吸器つかえるぜ だからコロナなんて治療できるぜ”みたいな事言ってますが、勘違いも甚だしいです。彼らができるのは、せいぜい人工呼吸器に接続するまでの過程であって、それから先の集中治療、例えば、現在、急性呼吸窮迫症候群ARDSになるような患者さんの管理はほぼできない。もちろんやっている先生もいるけど、やっている先生はやってるぜって言わない。
 呼吸器がついたコロナ感染の患者さんは、とにかく非常に手間がかかります。一例をあげると、体位交換をしながら腹臥位(うつぶせ)療法をやったりする。これは、肺の肺胞という組織が虚脱するのを防ぐためだけど。これを、一人の患者について朝晩やるたびに、5人くらいのスタッフでやる(1人が人工呼吸器を管理。残りの4人が体をもちあげるなど 体重が重ければもっと沢山の人数が必要)。ひとりについて、15分くらい準備(医療者が防護衣の着脱)や後片付け(排せつ物の処理など)にかかる。これを、コロナ病棟患者、たとえば5人にやるとしたら。これだけで朝、夕で2-3時間かかる。効率悪いんじゃねーとかって思うかもしれんが、人工呼吸器のついた、コロナ患者に接触しながら、僕等も感染防御しながら、付属の機器類やカテーテルが誤って抜けないようになどを気にしながらやるとどうしたって、それくらいはかかる。さらに、全身管理は、敗血症などになれば、場合によっては、透析なんかも同時進行で行うことはあるし、さらに、ECMOをはじめたら、臨床工学技士は、昼夜を徹してその患者のECMONの管理にひっつく事になる。つまり、一人の患者に5人くらいのスタッフが、昼夜を問わずくっつくことになる。
僕は非常勤で大学の救急で週1回程度勤務しているから、こういった、現場の苦労を多少わかっているつもり。
今日、今現在(現在、8月3日午前3時位)、新型コロナウイルス感染でECMO中の患者さんの、すぐ近くでICUに当直勤務しています。現在進行系で、臨床工学技士さんや看護師は防護衣をきながら、ずっとこの患者につきっきりで対処している。患者さんは40歳代、基礎疾患はなし。俺は、ちょこちょこ指示対応や、他の患者さんの対応で呼ばれるくらいで正直それほど大変ではない。ある意味医師が一番楽かもしれない。
 
でも、これでも全然全部ではなくて、大変な事はもっと沢山ある。ICU勤務の医師や看護師によっては、ワクチンを打つまでは、家族に感染さないようにホテルで別居したり、庭にテントを立てて住んでいた医師もいた位。特に、現在、コロナ病床がうまりつつあると、コロナではなくても、発熱、呼吸苦といった患者の入院先がなくなってくる。そうすると、全く関係ない、小児の発熱なんかの入院についても、病院によっては制限せざるをえないなんてことになる。これが、医療崩壊。最近は、僕も非常勤で勤務すると、ほぼ朝まで眠る事は出来ず働きずくめになる。他の勤務医なんてもっと過酷な勤務で働いているから頭が下がる。36時間くらい睡眠がとれないことも、最近では結構増えた。ちなみに、大学病院だと、当直料金は、セブンイレブンの深夜勤と同じくらい。
メディアや政府は数で評価するだけですが、数で評価しただけではわからない現場の苦労があります。僕も、家族以外の会食は約1年半はしていません。でも飲食業に対する想いや、旅行業界などの方への想いは皆さんと変わりません。オリンピックもTVの前で楽しんでいます。
現状の日本政府の対応にはがっかりしているけど、僕が何もできないのも事実。僕ができるのは、目の前の仕事を淡々とやるしかないと思っています。

 今現在、東京では救急車呼んでも、病院見つかるまで何時間もかかる。今までは助かった病気も今は助からない現実が、もうすでにあります。皆さんどうか、無責任な行動をつつしんでください。貴方の愛する人が感染しないような行動を心がけましょう。

 

                     先日、病院の屋上でみたブルーインパルスです。

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